【特別対談】いとうまい子さん×ベンチャー稲門会 阿部会長
今期、ベンチャー稲門会に入会していただいたいとうまい子さんとベンチャー稲門会会長の株式会社ディア・ライフ阿部 幸広社長に対談していただきました。
いとうまい子さんは現在、芸能活動をしながら早稲田大学博士課程で老化学について研究される一方で、テレビ番組制作会社「ライトスタッフ」の経営もされています。
今回は数あるお話の中から10,000字に絞って会話形式で記事にさせていただきました。
■なぜ上場企業の創業者に女性は少ないのか?
いとうまい子さんにベンチャー稲門会へご入会いただくに当たって、当会会長であるディア・ライフの阿部社長お話しいただきたく今日のお席を設けさせていただきました。伊藤さん、お聞きしたいことはありますか?

まず阿部さんが、上場したいと思われたきっかけについてお聞きしたいです。元々いらっしゃった二チメン(現在の双日)時代に起業を決めて、独立した瞬間に上場することを決めていたのか、それとも起業してからやっぱり上場したいと思われたのか。どちらですか?

上場しようと思ったのは起業してからですかね。起業するまでは、とりあえず何とか食っていこうとやっていました。大きな会社に在籍してから独立をすると、取引先であったり、色んな人が変わるわけです。そんな中で「何とか起業前と同じぐらいの仕事をしたい」と思うと、上場した方がいいだろうと思ったんです。

起業前と同じぐらい大きな仕事をしたいと思って上場にたどり着いたんですね。私が今日お聞きしたかったことの一つに、なぜ女性の創業社長で上場企業の社長は少ないのか、ということがあります。女性の創業者で上場している方って少なくないですか?

そうですね。まず、今、4000社ぐらい上場企業ってあるんですよね。そのうち女性の創業者って、いま何名いるのかな。有名なところではDeNAの南場さんとかは上場企業の女性創業者ですね。最近で言えばゲーム会社のcolyとかの社長も女性ですね。

南場さんね。他にもいらっしゃるんでしょうけど、やっぱり少ないんじゃないかと思います。日本は遅れているからとか、男尊女卑だとかよく言われますけど、上場企業創業者に女性が少ないのには他に理由があると思います。上場企業の創業者には男の人の方が多いのは、海外でも同じなのではないでしょうか?著名な経営者って男性が多い気がします。だから、別に日本が遅れているとかではなく、女性で上場まで目指す人がそもそも少ないのかなと思います。私が目指してみようかなと思って。

いいですね。是非、目指してみてください。

ありがとうございます。そうしたら、その越えられない壁が見えるかもしれないなと思っています。

そうですね、伊藤さんならできると思います。そんなに難しいことじゃないはずなんです。ライトスタッフさんで目指しますか?

ライトスタッフじゃなくて、別の会社を創業して上場させることを考えていました。ライトスタッフで目指してもいいと思いますけど、規模の問題もありやっぱりクリークアンドリバーには負けてしまいますから。どうせなら、もっとガツンと別の業種が良いですね。例えばゲーム会社とか(笑)

いとうまい子さんが、ゲーム会社(笑)

ゲーム会社は冗談ですが、目新しいことをやりたいです。しかも上場するとなると、そこに投資したい人が「この会社は伸びるな」って思えるようじゃないと、楽しめないじゃないですか。せっかく上場を目指すんですからね。

伊藤さんは早稲田大学で老化について長年研究されていますから、バイオベンチャーをやるのはどうでしょうか?

いいですね。博士号を取って目指したいですね。(笑)
ところで阿部さんは起業してから、自分1人で考えて、上場しようって決めたんですか?
それとも誰か周りでサポートしてくれる人から「上場ってこういうものだよ」みたいなことを教えてもらっていたり、お勉強されてたんですか?

勉強というほどでもないんですが人にも話を聞いて色々と準備はしました。結構、上場まで早かったんですよ。

33ヶ月ですよね。記事を読みました。
そこからどういうふうに上場するためのステップを踏んだのかが気になります。上場するためのステップはたくさんあると思うのですが。

いろいろあります。上場したいと思ってからは、まずはマザーズを目指しました。今度からマーケットが変わって、上場市場はプライム、スタンダード、グロースの3市場になります。まずベンチャーが目指すのはグロースになると思うんですよ。赤字でも成長性を訴えられれば上場していく会社はあります。

赤字でも上場できるんですか?右肩上がりじゃないとダメだって思っていました。

将来性さえちゃんと説明がつけば上場できるんです。一番やってはいけないのは、公私混同です。そのためにもちゃんと監査法人に外から見てもらうことです。上場するためには監査法人の監査が二期分は要ります。だから最低でも2年かかるんですよ。2年分の決算の数字を見て、上場審査っていうのをやることになるんですよね。
最低限、取締役が3名必要で、社外取締役が3分の1以上だから2名で、社内の常勤監査役が1人。非常勤監査役が2名必要とか。

なるほど、必要最低限、しっかりやるべきことがあるんですね。

会社の本業やる役員も、自分を入れてあと2人はいた方がいいと思います。それから当然そのビジネスの中身も大切です。法律を守っていて、将来性があると、上場できます。あとは証券会社ですね。監査法人は極端に言えば、お金を払って、真面目にやっていれば監査証明をくれます。したがって彼らは別に会社がそんなに儲かっているかどうかは関係ないわけです。そして、証券会社が「なるほど、この会社は東証に申請してもいい」と納得してくれればいい。証券会社にもコンサル料を払います。

なるほど、全部合わせると莫大な金額になってきますよね。

そうですね。今、その費用も高くなってきています。監査法人に1千万円か2千万円は支払います。
証券会社は成功報酬を多くするかどうかとか、その辺でまた変わってきます。一番安いのは●●証券かな。詳しいです、僕。(笑)

2社上場させていますもんね。上場のプロですよね。(笑)
私がやるならバイオの方ですね。

僕も出資します。

じゃ、博士取れたら何かやりましょう。

老化学のバイオ系で是非やっていただきたい。社長が博士号持っていて、抗老化の会社を立ち上げる。

人生100年時代をどう生きるかは一つのテーマですよね。私は、長生きすることを勧めている訳ではなく、自分の寿命をいかに元気に最後まで暮らすかということを一番に推奨したいと思っています。

健康寿命ですね。クオリティ・オブ・ライフ。

そうです。日本人の平均寿命と健康寿命の差は、男性で約9年、女性で約12~13年と言われています。その間、要介護状態になったり、寝たきりになる可能性も高いのです。大きな社会課題の一つだと思います。

もし、私が博士号を取って上場するようなことになったら、早稲田の子たちにもすごい希望を持ってもらえるような気がするんです。

女子学生は特に希望を持つでしょうね。

早稲田を卒業して、就職後、結婚、子育てを経て、その後でも本人のやる気さえあれば起業できるのだ!と思えることは重要ですね。
私がロールモデルになって、周りの人達が夢と希望を持ってもらえたら嬉しいです。そして、長年支えてきてくれた方々にも恩返しをしたいです。とにかく、私がやってみてうまくいけば、夢と希望を与えることも、恩返しすることも叶うかなと思うんです。

それはいいですね。僕の会社「ディア・ライフ」という社名なんです。「大切に生きる」という意味を込めています。自分が大企業にいたときにも、やっぱりいろいろあったんですよ。合併してドロドロしたりとかね。
それで自分の1回きりの人生をいかに大切に生きるかという思いを込めて「親愛なる人生」という名前をつけたんです。

だから「ディア・ライフ」なんですね。素敵なネーミングですね。
次は私の会社の名前を考えましょうね。社名はすごく大切ですよね。芸能の方はマイカンパニーって「まいこ」の「まい」を取った名前にしちゃったし。ライトスタッフも兄がつけたのを勝手にそのまま引き継いでいるだけなので新しい会社では社名をよく考えたいと思います。

いいですね、考えましょう。博士号取るまでにあと2年ぐらいですか?

2年以内に取れるように頑張ります。

お願いします。ちょっと僕もいろいろ考えておきます。

はい!是非お願いします!若い女の子たちや早稲田の子たちにも、卒業したら起業したいなって思ってもらうためには阿部さんみたいに「いや、やり方さえわかっていればできるよ」っていう人が近くにいるかいないかの違いは大きいと思います。最近、起業しやすい環境になって先輩の話が聞ける環境も増えてきていますが、それでもまだ少ないと思います。

実は、僕はそんなに努力をしてないんですよ。

そう言われると簡単かもしれないって思うはずなんです。若い子は素直だから「あ、できるかも」って思うと思います。

難しいことは外注できますし人の力も借りられます。ただ本質の大事な部分がしっかりしていれば。

そこを知らないんですよね。学生にはそれを教えてあげられるようなサークルが必要ですね。

女子部は、是非、伊藤さんが幹部を務めてください。

私もこれから上場目指して、実現したときには女子部代表として頑張ります!(笑)

2年以内に博士号で、そこから3~5年は必要ですね。

そうですね。やる気が湧いてきました!

できますよ。是非、やりましょう。

18歳でアイドルとしてデビューして45歳から大学に行きたいと思って早稲田大学人間科学部の健康福祉科学科を見つけて、予防医学を学び始めて博士になって上場企業を創ったら、いつからだって何でもできることを体現できますよね。早稲田にも恩返しできますしね。

面白いですね。恩返しも、本当にこれ以上ないと思います。
■上場することの社会的意義

先程、伊藤さんが仰っていたように上場企業の社長さんと近い距離で話せる人って少ないですよね。その環境が近くにあるかどうかが大切ですね。

そうですね。上場って何をすればいいかわからないし、近くに聞ける人がいないから、そこを目指すきっかけも生まれないです。
女性で起業して上場している人がたくさんいれば、今日みたいにご飯でも食べながら「上場なんて簡単よ」って話が聞ける。

特に若い女性だとなかなか上場企業の男性社長には話を聞きづらいですよね。

女性の先輩起業家が伝授されたことを、伝えていってあげられればいいですね。

世の中のために相当役に立ちますよ。お願いします。

上場することは世の中のためになりますか?

なります。いい会社が上場すれば、株主もキャピタルゲインが得られるし配当も得られる。そして共に成長していくことができる。銀行預金にするよりはいいですよね。さらに税金を納めれば、国に対しての貢献も増えるわけだし、雇用も増やすことができる。
税金を払いたくない、自分だけ儲かればいいと思っている人は上場会社の経営に向かないと思います。