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インタビュー:東証一部上場テクマトリックス株式会社 由利社長

2021年2月15日、ベンチャー稲門会にご協力いただいている東証一部上場テクマトリックス株式会社の由利社長にご登壇いただき「経営者としての心構え」というテーマでセミナーを配信致しました。そのインタビューの様子を記事にしました。

テクマトリックス株式会社は情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業を柱として様々なITソリューションを提供されているIT企業です。特にセキュリティ、医療、CRM、ソフトウェア品質保証、金融機関向けリスク管理それぞれの分野における実績が顕著であり、過去18期連続で増収を続ける時価総額1,000億円超(2020年後半の株価水準)の企業です。

■「人間万事塞翁が馬」

戸塚
まず早稲田大学建築学科へ進学を決められた経緯をお聞きしてもよろしいでしょうか。

由利
子供の頃は大工さんかお蕎麦屋さんに憧れてました。子供の頃自分の父親が副収入としてアパートを建てようとしていた時に大工さんを見て「かっこいい」と子供心に思っていたんです。
また、今はウーバーイーツがありますが当初はお蕎麦屋さんといえば出前のそばを片手に乗せたまま自転車に乗ってカーブをきれいに曲がったりするのがとてもかっこよく見えていて、大工さんかお蕎麦屋さんになりたいと思っていました。子供の頃のそういった体験もありましたし、元々絵を描くことも好きだったため、早稲田大学の建築学科へ進学を決めました。

戸塚
その後、商社のニチメンにご入社を決められたというのはどういった背景だったのでしょうか。

由利
まず、建築学科に入る人はみんな建築家になりたくて入るのですが、現実的には3分の2の人がゼネコンに就職していたんです。自分も絵をかくのがすごく得意だったので建築学科へ入りましたが、ないものを作ったり一からデザインするというのは全く違う才能なんだなということに気づいていったんです。
そうした背景もあって建築家になるのでもなく、普通にゼネコンに就職するのでもなくて、当時は商社もリゾート開発等のゼネコン的な仕事もしていたので、商社に入社しました。そうしたらいきなりITの会社に出向になりました(笑)

戸塚
それでTISさんの方に移られたんですね。

由利
そうですね。当時ニチメンのITの事業が遅れていると言われていて、グループ内では第一期生という形で出向になりました。これもまあ結果として本当に恵まれていたと思います。

戸塚
いきなりITに配属されて、戸惑いませんでしたか。

由利
IT事業が遅れていたため、逆に自分が活躍できる場所があったんです。26歳で課長になったことも、そうした状況であったからこそ起こった事実であったと思います。
当時のニチメンデータシステム(現テクマトリックス)の社長が自分の親ぐらいの年だったので、その方が退任されるときに2000年から社長をやることになったわけですが、それも色々な局面の中で向き合ってきた結果であったと思います。
事業は自分で構想して創業するという形もあると思いますが、一方で、自分の目の前にどういう人が現れるかとか、わからないことが多いわけです。そういう局面、局面に前向きに向き合っていくと道が開けるということもあるので、そういう意味で「人間万事塞翁が馬」という言葉は私の経験してきたものをまさに表しているなと思います。

戸塚
幸となるか不幸となるかは、自分の捉え方次第ということですね。以前お話しをお伺いした際に、2000年4月にニチメンデータシステムの社長に就任され、翌月の5月に突然の「身売り話」があったとのことでしたが、その当時のお話しについてお聞きしてもよろしいでしょうか。

由利
はい。ニチメンデータの社長になって1か月経たない頃にニチメン(現双日)の副社長から連絡がありまして「由利君のところは売らなくてはいけなくなった」と言われたんです。それに対して「わかりました。では自分で株主を探してきます」と答えました。
2000年の当時は、バブル崩壊の後に時価会計が導入された時期であって、投資がうまくいっていない資産をオンバランスにしないといけなくなりほとんどの商社が赤字になるという凄まじく厳しい時期でした。ニチメン、日商岩井も倒れる可能性があるという危機的な状況だったんです。
実は他の商社もそうで、伊藤忠さんもCTCを上場させたことによって復活したんですが、ニチメンと日商岩井もIT関連の企業を上場させることを目論んでこの危機を乗り越えました。まず日商岩井の情報産業本部をITXという会社として切り出し、そのITXにニチメンデータシステムを含むニチメンの関連会社5社を売却するパッケージ・ディールを行い、その売却益でニチメンは危機を乗り越えました。ITXはその後ヘラクレスに上場して日商岩井はその株式売却益で危機を乗り越えるという生々しい話がありまして、そこにまあ、当社は巻き込まれたという話になります。

戸塚
バブル崩壊後に時価会計が導入されて、大手商社の財務が痛み組織再編が行われた時の渦中にいらっしゃったわけですね。

由利
そうですね。ニチメンの副社長から売却の通告を受けた後、私が株主を探すことになった時、同じ頃、2000年4月に楽天さんが上場していまして、当時のIT系の上場の中でもすごく規模の大きな上場でした。その当時、実は色々な巡り合わせがあり、当社が「楽天市場」の開発を手掛けていて、楽天さんは重要なお客様の1社だったんです。
そうしたつながりの中から、三木谷さんに株主になってほしいとお願いしたところ「いいよ」と言われたんですけれど、もう実はその裏側で先程の話が動いていて楽天さんとの資本提携はすぐには実現しませんでした。
その後、当社は一時はITXの100%子会社になったのですが、楽天さんからの出資を粘り強く株主に交渉しまして、翌年2月に15億円を調達することになりました。三木谷さんというカリスマ経営者から、私たちに欠けていた部分にアドバイスをもらいました。例えば会社の理念が明確に決まっていなかったことに対してもアドバイスをもらいましたし、目標をストレッチして成長にコミットしていく方法について強烈な影響を受けました。2000年当時に会社を売却せざるを得ないという局面があったからこそ、楽天さんから出資を受けたり三木谷さんと経営について話せる機会を得られたわけなのです。
目の前にあっても通り過ぎてしまう出会いもありますが、自分の仕事への向き合い方や心の状態によって、その出会いが企業にとっても人生にとっても大きな意味を持つ出会いに繋がる可能性があります。三木谷さんとの出会いとはまさにそういう出会いだったと思います。

戸塚
就任早々の身売り話は、結果として三木谷さんと出会うきっかけになったということなんですね。

由利
はい。経営者の方々は色々な背景があって創業して、自分はこうなっていきたいと目標を持たれている方がいらっしゃるのでそれはそれで素晴らしいと思います。しかし、やっぱり人の出会いとかは自分では100%はコントロールできないです。
起業されている方は、自分が経験されたことを糧に起業されたり、人との出会いがすごく大きなインパクトになって創業されていたりすると思います。私の場合は自分で創業したわけではないですけれども、そうした出会いの中から社長になって、会社を成長させるにあたって伴走できたのは本当に恵まれているなと思っています。

戸塚
その後、上場を目指されたということでしたが、組織再編直後は従業員の方々の士気はどのように上げていかれたのでしょうか。

由利
やはり上場は一つの通過点としての目標になりました。目標を如何に適正に示すかというのは非常に重要だと思います。数値的な目標はストレッチしすぎると机上の空論になりますが、あまり低すぎるとモチベーションにはつながらないです。
上場と言うのは一つのわかりやすい目標であり、皆が一つの目標に向かうという意味ではわかりやすいメッセージになりますし、当然、上場した後も成長は続けないといけないわけですけども、やはり目標の明確さというのはツールとしてプラスだったかなと思います。

■「事業を伸ばすこと=新しいことに取り組むこと」

戸塚
事業を伸ばすために必要なことは何であるとお考えでしょうか。

由利
いくつかお話ししたいと思います。
トーマスエジソンの言葉に「Many of life’s failures are people who did not realize how close they were to success when they gave up. 」というものがあります。成功にどのぐらい近いかを理解していないことによりギブアップしてしまう人が多いということです。
新しいことに取り組んでいかないといけないんですけれども、結局どんなに素晴らしい計画があっても最後までやり遂げないと成功はつかめません。90%までいっているのに、残りの10%を頑張れない人ややりきれない人が多いんです。とにかく涙を流してでも続けたいと思っていることが大切です。
新しいことをやって成功するためには諦めないというか、競合が止めていっても最後まで歯を食いしばってやってる人達が勝ってるんですね。
また、企業のニーズは時によって変わると思いますが、軸となる哲学や信条、自分たちの変えてはいけないものがあると思うんですね。自社がやってることは自分たちが社会に対して直接的に貢献できるものを選んでいるはずなので、何をやっていくにしても変えてはならないものもあるがあると認識することも大切です。
それからハウツーは弱いなと思っています。解決したい問題というのはハウツーの中には直接的な解決策がない、ということを理解することは重要だと思います。抽象度の高い本質を理解するということを日々訓練していかないといけない。
そして最後に、他者への貢献、つまり利他の精神です。そもそも社会課題を解決してきているのが事業会社の歴史だと思います。そういう意味ではやっぱり他者に対して貢献できるものかどうかっていうのはすごく重要な観点かなと思います。

■「惑わされるな」シリーズ

戸塚
「惑わされるな」シリーズとしてスライドを作成いただいておりますが、若手経営者の皆様に要点をお伝えいただけますでしょうか。

由利
株主価値向上を求められますが、従業員の幸福がなければ株主価値は上がりません。また、流行に惑わされないようにしてください。流行はVolatirityが大きいです。継続的な需要があって、世の中にプラスになる事業を行う必要があると思います。
また、ジャック・ウェルチの「選択と集中」はすごく重要だと思うのですが、一方で色々な事業があって色々な事業が波動していることを無視してはいけません。それらが補い合って会社は何とかバランスしているんです。集中し過ぎて失敗した会社もあります。投資家はわかりにくいといって選択と集中を求めてくることがありますが、私はそれをそのまま鵜呑みにしてはいけないと思っていて、事業は一定程度のポートフォリオがあることが会社の安定性に繋がっていくと思います。

戸塚
一般的には正しいと思われがちですがそれだけに惑わされないように、ということですね。その他はいかがでしょうか。

由利
そうですね。それからInnovationという言葉はよく使われるんですけれども、Innovationは成功したものを世の中の人がInnovationと後付けしているんです。Innovationを議論する前に、どうやって成功するかを議論する方が重要です。
また、「ロジカル・シンキング」は色々なフレームワークがあって、確かにすごく有用です。ただ、多くの人が同じフレームワークで分析すれば、そこから導き出される答えは同じなわけで、正解はコモディティ化してしまい、差別化ができません。ロジックだけではビジネスは成功しないことも理解するべきだと思います。
ロジックだけではなく思い入れだとか、情熱だとか、他の要素が必要です。また、ロジックでは魅力的に思えない市場ほど、参入障壁が高く、実は他の人が入ってこないという意味で、事業の継続性があったりします。

戸塚
様々なお話をお聞かせいただきありがとうございました。本日はお時間となりましたが、今後もベンチャー稲門会にご協力いただけますと嬉しいです。引き続き宜しくお願いします。

■登壇者プロフィール

テクマトリックス株式会社
代表取締役社長 由利孝氏

1983年早稲田大学理工学部を卒業後、ニチメン株式会社入社。1987年ニチメン株式会社情報部門の戦略子会社テクマトリックス株式会社にてアドバンストシステム営業部長を経て2000年、現職。2005年ジャスダック上場、2010年東京証券取引所二部上場、2013年東京証券取引所一部上場。

株式会社日本M&Aセンター
ベンチャー稲門会事務局長
戸塚直道(インタビュアー)

2015年 早稲田大学基幹理工学部数学科卒業、大和証券に入社。
2018年 株式会社日本M&Aセンターに入社。
2020年 ベンチャー稲門会事務局長に就任。

■運営スタッフ

ベンチャー稲門会事務局 川浦・小林・谷中

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