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ベンチャー稲門会幹事長 リンクアンドモチベーション小笹会長インタビュー

ベンチャー稲門会と早稲田大学インキュベーションセンター共催にてオンラインイベントを実施しました!第一部ではベンチャー稲門会幹事長であるリンクアンドモチベーション小笹会長にご登壇いただき、起業、上場に必要な考え方等、様々にインタビューさせていただきました(インタビュアーはベンチャー稲門会事務局長の戸塚)。また、第二部では早稲田関係者限定のオンライン交流会を実施し皆様の親睦を深めていただきました!

本番前後のインタビューの様子を以下に記載しますので、是非、ご覧ください!

■起業を考え始めた時期

小笹
独立起業を決めたのは1999年の10月、創業の半年前になります。背景を説明しますと、まず私自身はリクルートで14年間お世話になりました。入社直後から前半の7年間は人事部に配属されまして、当時急成長中のリクルートで新卒人材の採用を担当していました。その頃から人材の採用という「組織の入り口」から、組織全体を眺める、そういった習慣が身についていました。
採用って機能としては人を「集める」「見極める」「口説く」という三つがあるんですが、一番大事なのが「口説く」なんですね。それは言い方を変えれば「入社するモチベーションを高める」ということになるんです。ですから人材を口説いて入社するモチベーションを高めるということをしていたのが、前半の7年間でした。後半の7年間は、私自身が手を挙げて、組織人事コンサルティング室を立ち上げました。責任者として、リクルート初のコンサルティング事業を1人で立ち上げ、7年間で35人程度の組織にしたんです。
当時のリクルートには人材の採用という観点では、求人広告の事業部がありました。そして人材の育成という観点では、いわゆる教育研修の事業部がありました。この2つにまたがる形で組織人事コンサルティング室を私が運営していたということです。人材の採用も、それから人材の育成も、さらには組織制度、評価とか給与制度、それから組織風土、すべてに関わっていました。わかりやすく4つのテーマをあげますと人材の「採用」「育成」「制度」「風土」これらをトータルでデザインして、コンサルティングをしていました。そうしないと本当の意味でクライアントに価値を届けられないと考えていました。
ところが、1999年10月に求人広告の事業部と教育研修の事業部が完全に分かれることになりまして。結果的には私の理想である採用も育成も制度も風土もトータルで設計するということが貫けない環境に変わってしまったんです。クライアントや複数の経営者から「独立したらどう?」と言われたのがその頃です。部署の主要メンバーも「旗上げてくださいよ」と。外からも中からも押し出されるような形で独立起業を決意したというのが、1999年10月のことでした。
当時は「モチベーション」という言葉はあまり広く使われていなかったのですが、社名にも「モチベーション」を入れ、これからの時代、各企業にとって最も大事である資源は、恐らく「人材」であろうと訴えました。もちろんスキルとか経験、資格も大切ですが、根っこにある社員一人ひとりのモチベーションをどう高めればいいのだろうと悩んでいる経営者は、業種業態、規模関係なく、共通の悩みとして存在すると確信していました。だからこそ「この領域から逃げないぞ」という決意を込めて、「モチベーション」を社名に入れました。これが起業の決意の時期と、起業にいたった背景です。

戸塚
組織人事コンサルティング室の立ち上げから7年間で35人の組織にされた経験は、起業へつながったんでしょうか。

小笹
そうですね。組織人事コンサルティング室は1人でスタートした事業部で、リクルートの企業内ベンチャーとしての活動でしたので、その7年間の起業から事業を発展させるまでの疑似体験ができたのは大きかったと思います。リクルートという会社はいい会社なのですが、元々広告を中心としたビジネスモデルの会社で、実はコンサルティングモデルとあまり相性は良くなかったんです。コンサルティングは中立的で客観性が求められます。不自由さも感じるようになり、自由を求める形で独立をしました。

戸塚
独立されるときはリクルートとしても大きな出来事だったのではないでしょうか。

小笹
現場からは重宝されていましたね。リクルートは当時、求人広告を売るか、パッケージの教育研修を売るかしかなかったので、顧客のニーズを完璧に満たすのは難しくて。そういう意味ではそこにコンサルティングが加わることで、現場の営業からの引き合いもすごく多かったですね。

戸塚 書籍にて「創業してみるとこんなにも支援してくれる人がいたのか」と驚かれたというエピソードを拝読しましたが、その時のお話しも詳しくお聞かせいただけますか。

小笹
コンサルティングですからクオリティがすごく大切で、一生懸命そのクオリティを高めて顧客と真剣に向き合ってきました。その当時、自分にどれだけの「信頼残高」が貯まっているのかを預金通帳の残高のように確かめることはできなかったんです。いざ独立起業という大きな決断をするとき、自分への「信頼残高」がいかに貯まっていたのかが顕在化しました。
クライアントも「独立するんだったら、小笹さんの新会社と取引します」と言ってくれましたし、ありがたいことに独立を許してくれたリクルートからも、「提携関係は続けていこうよ」とお声掛けいただきました。海のものとも山のものともわからない新会社についてくるメンバーもいて、そういうときに「信頼残高」が貯まってたんだなあというのを後から実感しました。

戸塚
顧客、会社共に真摯に向き合ってきた結果、「信頼残高」が溜まっていたことに起業して気づかれたんですね。小笹さんの書籍で言うと自身の周りの「関係世界」の構築の重要性に気づかされます。

小笹
人間って関係の網の目の中の一つとして存在しているものなんですよね。いわゆる社会的動物というものですね。関係の網の目の中に生きている。これは見方を変えるとある意味、不自由さもあるわけです。家族だったり友人だったり上司だったり顧客だったり、いろんなところと関係も持つということは逆にいうと不自由さを持つことでもあるのですが、光の当て方を変えれば、その関係の網の目が自分にとってのすごい財産になって、自分の自由を実現するための貴重な資源になるということがある。世の中には関係性の社会が息苦しいと感じる人もいるでしょうし、一方で、「信頼残高」さえ積み重ねていれば関係の網の目というのが大きな武器になると思います。

戸塚
これから創業を考えている方々には非常に重みのあるお言葉であると感じました。

■創業時の思い

小笹
大変ありがたいことに設立直後からクライアントの依頼が殺到しましたので、早速、中途採用を始めました。その当時のコピーは「今、企業にとって最も大切なものが後回しにされている」だったんです。創業当時7人の会社でしたが、この求人広告によって230人もの応募者が集まったんです。「これはいけるな」と確信しました。
2000年当時は大不況の時代でしたので、リストラや成果報酬へ切り替える会社もいました。でも、私は社員のモチベーションや会社と社員のエンゲージメントが大事であるとわかっていましたので、その考え方を世に広めたいと思っていました。これからの時代は社員が一番重要な資源であり、得難い資源であり、大切なのはモチベーションですよ、というのを広く世に発信したいというのが創業の思いにありました。

戸塚
今でいうと「人材が大切」という考えは当たり前のようですが、創業当時は一般的ではなかったんですか?

小笹
当時はどちらかというと人をいかに切っていくかという状況でした。「いや~社員のモチベーションが大事ですよ」というのを理解してくれるのは一部の経営者だけだったと思いますね。

戸塚
これも書籍で拝見したのですが、起業を悩む若者に対して小笹さんは「社会に対して強いメッセージがあれば起業しなさい」と仰られるようですね。創業当時の小笹さんにとっての社会へのメッセージがよくわかりました。

小笹
自分の中で金脈を掘り当てたような確信を得ていました。元々採用マンからスタートしていたので「人を惹きつける」「モチベーションを高める」ことができる組織こそが成功すると気づいていました。このことを世の中があまり気づいていない時代にいち早く気づけたなという思いがありましたので、早く発信したいということで創業当初から年間3冊から4冊ぐらいのペースで「モチベーション」というタイトルがつく本を書いてきました。「モチベーション」で検索すると僕の書籍とか、リンクアンドモチベーションがあがってくる。そのオンリーワンのポジションを早く取りたかったというのがありました。

戸塚
書籍を当時たくさん出されていたのは広告の効果もあったんですね。

■創業当時の採用基準

戸塚
創業当初打ち出した広告に対して230人の応募が来たというお話しがありましたが、創業当初の採用の考えについてお聞かせいただけますか。

小笹
創業当初から強いこだわりがありました。スキル偏重の採用というよりは、カルチャーフィット、あるいはビジョン・理念への共感を重視していました。スキルを持った人材も喉から手が出るほど欲しかったのですが、やっぱり最終的にはカルチャーフィット感がなかったり、ビジョン・理念への共感がなかったりすると最後は別れることになってしまうんですよね。だからこそ現在もそこは変わらず、共感重視で採用しています。

戸塚
14年間リクルートで人事、組織コンサルという立場で組織を見られていたからこそこだわりがあったんですね。

小笹
そうですね。見極めるというよりはむしろ、いい人材と言うのは誰が見てもいい人材なんです。だから見極め方というよりは、いかに口説くかの方が大事かもしれません。よくベンチャーの経営者から「小笹さんは採用時にどういう点を見極められてますか?」と質問を受けるたびに「その質問をする時点でほんまにいい人材に会ったことないやろ?」と思ってしまうんです。ほんまのいい人材ってどの業界のどの経営者が見てもいい人材なんですよ。

戸塚
とはいえ、どういう人材がいい人材なのかは気になります。

小笹
そうですね。会社に依存したり人生を預けたりするのではなくて、独立起業してなくても、自分株式会社の代表者なんだという気持ちを持っていること。僕はよく社員に「アイカンパニー」の経営者であれと言います。自律的、主体的に自らのことをキャリアも含めて開発していける人。そして会社と対等な関係でパートナーシップを結べる人。こんな人は中々いませんが、多くの「アイカンパニー」が溢れる世の中にしたいと思いますね。最近はこのような考え方にようやく時代が追い付いてきたなと思っています。個人個人が副業・兼業を求めるようになったりしていますよね。そういった会社と個人の縛りあう相互拘束的な関係ではなくて、相互選択の関係に移りつつあると思っています。

戸塚
副業、兼業が当たり前になる時代が来るというのは以前より書籍に書かれてましたよね。予言のようですごいなと思ってました。

小笹
そうですね、ありがとうございます(笑)。

■起業を踏み切れない方へ一言メッセージ

小笹
たぶん、私自身も踏み切れないという気持ちは同じだったと思うのですが、ある時ふと、自分の腹の中に使命感が芽生えました。使命感は漢字で「命を使う」と書きますけれども「命を使うだけの役割を得たな。これからの時代は人材であり、モチベーションである」と。それを啓発していくことが自分にとっての使命だなと思えた瞬間があったんです。
今、創業しようかと迷っている人は「自分はどんな使命をこの社会の中で負おうとしているのか?」をもう一度自問自答してみてください。表層的にどんなビジネスが流行っているとか、どんなアプリが便利だとかそういうことではなく、どんな使命を「アイカンパニー」として背負っていくのか、それがすっきりと言語化できたり腹落ちすると、大きく一歩踏み出せると思います。それがなく表層的に「このマーケットが拡大しそうだ」とかそれだけで独立起業に踏み切ってもなかなか長続きしないんじゃないかな、と思います。「どんな使命を持つか?」そこを自問自答して言語化しておくことが大事なんじゃないかな、と思います。

戸塚
先程の「社会に対して強く発信したいメッセージ」があるかどうか、ですね。

小笹
そうですね。「社会に対して、何を発信したいのか?」ということですね。ビジネスと言うのは社会に対するコミュニケーション行為ですから。自分が発信したことに対し、顧客や市場が共感し、それが結果として売上になるんです。では、共感の総量を高めるためにどんなメッセージを伝えるか。メッセージを伝えるためのメディアは、商品・サービスである。そう捉え直して「自分は一体この事業・商材を通じて、誰に何を訴えたいのか?」「それが本当に自分の使命なのか?」と自分に問うことが大切だと思います。

戸塚
小笹さんの書籍に、リクルート事件後、それまでは売上や数字を追っていたけれど求人広告誌を一生懸命に読んでいる人を見て、「自分はこの雑誌を50万人に届けている」と思うと使命感を感じたというエピソードが心に残っています。仕事を通じて使命感を感じたことのない学生も視聴者にはいると思いますが、そうした方へも一言いただけますか。

小笹
自分は組織に入って組織にもまれ、人を育てるような経験もさせてもらいました。ある意味、円熟味をもった段階で38歳になって起業をしているんですね。これまで学生起業家にも何人も会ってきましたけれど、最終的に組織に悩む方を何人か見ています。そういう意味でいうと、バイト先でも何でもいいですが、チームをマネジメントする経験等を持たれた方がいいと思います。心の皺がつるつるな状態で起業しても、人をマネジメントするのは難しいかと思います。

■創業期をどう乗り越えたか

小笹
結論を先に言うと、気合と根性だけでした(笑)。たぶん今の時代では許されないでしょうね。創業メンバー全員がほとんど家に帰ることもなく、寝るときはデスクの上やソファーで寝たりとかしていました。気合と根性で乗り切ったというのは、自分たちに期待し、発注してくれるクライアントを裏切りたくないという一心で働いていました。今でこそワーク・ライフ・バランスが叫ばれていますが当時はワーク・ワーク・ワークな乗り切り方でしたね。幸いなことにクライアントから発注が集中しましたので、恵まれたスタートを切って初年度から3.6億円の売上を上げることができました。想定外だったのは、最初に用意した資金が足りなくなりそうだったことです。
売上をあげてお金が入ってくるのが2か月後ぐらいですから、オフィス作ったり色々と初期投資をして、想定外の費用もあり創業から3か月後に資金繰りに窮したことが一回だけありました。その時は一緒に始めたパートナーの役員の方の個人預金を預からせていただいて、なんとか凌ぐことが出来ました。それなりの資金を用意していたつもりでしたが、オフィスも銀座で、内装費も設立案内状も色々とお金がかかったし、中途採用もすぐスタートしたので3か月ぐらいで底をつきました。一か月耐えれば収入が入ってきたのでよかったんですけど、意外と創業当初の資金繰り、特にキャッシュフローはちゃんと設計しておかなければならいと、という学びはありましたね。

戸塚
初年度で3.6億円の売上、、、すごいですね。

小笹
2年目が13.5億円、3年目が19.5億円でした。急激に伸びていきましたね。

戸塚
一気に伸びたのにはどんな背景があったんでしょうか。

小笹
コンサルティングが採用だけでなくて研修のフルカスタマイズだったり、あるいは企業の人事制度、評価給与制度の設定であったり、あるいは教育研修プログラムも自分たちのオリジナルなものを開発したり、すべての領域をカバーできるようにどんどん広げていきました。広げつつ、人も採用しつつ、本も書きつつ、そうすると講演の依頼が来ますし、クライアントとしっかり向き合って成果を出せばそのクライアントからまた別のお客様をご紹介いただいたり、そういう好循環があって急激に伸びました。

戸塚
創業当初、寝る時間ありましたか?(笑)

小笹
正直、3~5時間寝れたらいいほうだったと思いますね(笑)。講演は2002~2004年ぐらいは年間100本やってました。今じゃ考えられないですけどね、若かったからエネルギーもありましたし。

戸塚
年間100本…。社長が先陣を切ってリーダーシップをとっていたというのは、社員からすると勇気づけられたのではないかと思います。

小笹
やっぱりトップが一番真剣に会社に向き合って、使命を果たすことでそれを社員がリスペクトしてくれ、見守ってくれると思います。ある意味、一般の人達よりも私の場合は恵まれていたと思います。リクルート時代のコンサルティング室の主要メンバーと一緒に7人でスタートしましたので、そのような意味ではすごく恵まれていたと思います。

■なぜ上場しようと考えたか

小笹
当時のクライアントは2種類ありまして、いわゆる有名大手企業の採用コンサルティングと、ベンチャー企業の経営者を相手にしたフルパッケージのコンサルティングです。その中には上場したての会社や、上場を目指す企業が多くいました。そうした企業と接するうちあまり深い考えもなく「私たちも上場ぐらいは経験しておこう」ということで創業当初から上場はすると決めていました。
その後、2003年にジャスダックでの上場直前まで進めました。でもこのまま上場するとなぜか手足を縛られるような気がして、もうちょっと自由にやったほうが成長は早いのではないかと思い、主幹事証券や監査法人には大変申し訳なかったのですが、上場を一回延期したんです。それで思いっきり自由な身で内部に投資して、社員持ち株会も作って、もう一度「これなら色々な規制を考えても上場できる」と思ったので、2005年からもう一度準備して、2007年に東証二部、2008年に東証一部という歩みをしました。

戸塚
上場手前まで来たら上場する経営者の方が多いような気がします。そのときは上場のメリットよりもデメリットを危惧されたんでしょうか。

小笹
その時は既に新卒の学生の中ではそれなりに認知度がありました。セミナーにも講演にもたくさん出ていましたから。ですから上場することで採用人気が上がるとか、そういうことは必要ないな、と考えたんです。それよりもコンプライアンスの問題、会計、労務管理含めていろいろと手足を縛られることの方が、成長を鈍化させると思いました。それで上場を延期したほうがいいという結論に至りました。
自分が一番「上場だ、上場だ」と旗を振っていたにも関わらず、取締役会で「実は、俺迷ってて延期しよかなと思ってんねんけど…」と腹を割って話したら、満場一致で「延期しましょう」と皆言ってくれて、そこで最終決定となりました。その後、上場延期してからの成長の角度がまたグググと上がりました。上場した2007年の時に70億ぐらいの売上ですから、ずーっと伸びてるんですよね。今思えば、あの時の判断は正解だったのかなと思います。

戸塚
つまり2007年に上場されたときは、満を持して上場されたんですね。

小笹
そうですね。まずは二部から入って、一部に鞍替えするというのも計画通りにいきました。

戸塚
最初に上場を検討していた時、証券会社や監査法人はいつ頃から入れていたんでしょうか?

小笹
創業直後、2001年からです。当時は大和証券でした。最終的に上場する時は野村になったんですけどね。

戸塚
創業してすぐ、連携されてたんですね。

■上場する上で必要なこと

小笹
上場企業は自分の会社を作品として世の中に送り出し、株式市場に産み落とすことなので、心構えとしては「自分の会社が社会の公器になる」ということが必要ですね。当然、未上場の会社も社会の公器ですが、上場となるとより一層、社会の公器であるという意識や覚悟が必要になります。当たり前ですがお金の面も含めて公私混同しない。本当にきれいな体でないと上場はできません。会社と経営者の間でお金の貸し借りがあったとかよくあるんですよ。そういうのも全部きれいに過去までさかのぼって解消して、社会の公器にして送り出す。そういう覚悟がすごく大事だと思いますね。

戸塚
株式を公開し、公器となる自覚を持つということですね。

小笹
一個だけ最後まで抗ったのが、グループ会社にリンクダイニングという会社がありまして、銀座と大阪の新地の方でイタリアンレストランを展開しているのですが、東証からそれを切り離せと指摘されたんです。「経営者の趣味でやっているのと違いますか」と。あのレストランはお客様との接待としても社員同士の交流の場としても使えますし、社員の親を招いたり、福利厚生的な使い方ができるため、決して趣味ではないと主張しました。そしたら次に東証行ったときに、どっかの雑誌で私がワイングラスを持って、「ワインが趣味です」って書いてあるのを持ってこられて「趣味って書いてるじゃないですか」と言われました(笑)。

戸塚
笑っていらっしゃいますけど強烈なお話しですね(笑)。

小笹
そうですね(笑)。それでもこのレストラン事業を守り通しました。今でもリンクダイニングはあります。きれいにするために必要なことは多くありますが、これは信念だからと押し返すこともしないと、監査法人や東証から色々言われてきますので、バランスと言いますか、最適解を求めるのが大切かなと思います。

戸塚
曲げないところは曲げないということですね。

小笹
そう思いますね。全て聞いてたら会社潰れると思ってました(笑)。

■上場前後で変わったこと

小笹
上場前と後では、企業の内部統制的な部分が大変強くなりました。数字の計上の形から、計上に至るまでの手続きから、法務的な手続き、労務管理、勤怠管理、本当にきれいになりますね。そういう意味では上場に至るかは別にしても上場準備だけでもストレスは多いんです。会社の基盤を強くするという意味では圧倒的に上場前後で変わりましたね。

戸塚
M&Aをしていても、決算書を見れば社長の性格がわかります。

小笹
そうですね。僕がいつも言ってるのは、とにかく売上は顧客からの指示や共感の総量であるということです。企業というのはその共感の輪を広げて、そしてちゃんと儲けを作り出し、儲けからしっかり納税をする。そしてまた事業を拡大するために雇用を生み出す。企業にとってのこれに勝る使命はないと思っています。
最近SaaSビジネスなどが流行っていて、雇用をあまり作らなくてもそれなりに儲けが出るような事業ができたり、「MRRでしょ」というような人もいて、色々なモノサシが出てきていますよね。でもやっぱり根本は、売上は顧客からの共感の総量であり、利益をあげて納税をしっかりする。そして雇用を作る。その原点に立ち戻るときが来ているのかなと思います。

戸塚
経営者の皆様に共通して大切な考え方ですね。

小笹
誰からも何も褒められませんが、雇用を作ってることだけは褒めてほしいですね(笑)。

戸塚
それはもちろんですよね(笑)。上場会社になると社会性が高まるにつれて雇用を作って人も増えて求心力が必要になると思いますがいかがでしょうか。

小笹
上場に関わらず、企業の規模が大きくなってくると大人数を束ねる非常に強い求心力が必要になってきます。当たり前ですが、5人を束ねると100人を束ねるのでは、必要な求心力の強さが異なります。私の会社は現在1600人ぐらいなんですが、ものすごく強い求心力がいる。強い求心力の源が何かと言うと、私個人のキャラクターではなく、やはり会社のミッションだったり、ビジョンだったりします。求心力を高めていくためにも社会的な価値、使命をより言語化して研ぎ澄ましていく必要があるというのが実感です。そして上場すれば尚更その意識が大きくなっていきますね。ステークホルダーが違いますから。

■上場してよかったなと思うこと

小笹
自分の心の中の話ですが、市場からどうやったら評価されるのか、社会にどんな価値が提供できるのか、など未上場時代よりもしっかり考えるようになったのが良かったと思います。もちろん上場を維持していくコストもそれなりにかかるのですが、それ以上に上場することによって得られた体制の強化や世間的なレピュテーションとか、簡単に言えば直接金融で市場から資金が調達できたりなどのメリットもあります。上場してるからこその不自由さ、コストもありますが、それ以上のメリットを取りに行くことが大切なんじゃないかなと思いますけれどもね。

以上、第一部のインタビュー記事でした!

そして、第二部はオンライン交流会を実施しました!
現役の早大生から上場企業経営者まで様々な方々にご参加いただき、親交を深めていただきました!

オンライン交流会実施の様子

■登壇者プロフィール

株式会社リンクアンドモチベーション
代表取締役会長 小笹芳央様

1986年 早稲田大学政治経済学部を卒業、リクルートに入社、人事部に配属される。
1993年 リクルートにて組織人事コンサルティング室の立ち上げを経験し『伝説の人事』と謳われる。
2000年 リンクアンドモチベーションを設立、2007年には東証2部に上場、2008年には東証1部への鞍替えに成功。
2013年 同社代表取締役会長に就任し、現在は10社以上のグループ企業を統括している。

株式会社日本M&Aセンター
ベンチャー稲門会事務局長
戸塚直道(インタビュアー)

2015年 早稲田大学基幹理工学部数学科卒業、大和証券に入社。
2018年 株式会社日本M&Aセンターに入社。
2020年 ベンチャー稲門会事務局長に就任。

■運営スタッフ

ベンチャー稲門会事務局 川浦・小林・谷中

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